このページのタイムスタンプ(存在時証明)
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 ホームページが存在していたことの証明

 財 (知的財産権) において、ある創作や商品がいつ公開(使用)されていたかということは極めて重要な事項です。

 著作権であれば、盗用されたかどうかが、発表時期の証明で明確になり、

 特許であれば、出願日前にその技術が知られていれば登録されません。
 仮に権利化されても後で無効(初めから権利が無い)にされます。

 今回は、そのような公開時期に係る、知財の攻防(裁判)のうち、ホームページの開示時期の判断が問題となった例を 2件紹介いたします。

 いずれもアーカイブという世界中のホームページを自動的に保存するサイトへの記録、公開時期の証拠として提出されました。
 
 この証拠を地裁では認め、知財高裁では採用しないという明暗を分けた判断がされており、日時の証拠をどう確保するかの参考になります。



 一件目は登録意匠に類似する商品を販売しているとして、意匠権者に侵害差止を警告された事件です。

 警告された側は、その意匠は、出願前にすでにホームページで公開されていたから、本来登録されるわけが無く、無効であり、したがって差止請求は存在しないとの判断を求めました。

 その根拠として、アーカイブの記録を示し、意匠権者自身が、登録された意匠と同じものを意匠出願前にホームページで公開していると主張しました。

 つまり新規性が無いとの主張です。

 二件目は商標に関し、不使用により特許庁の審判で取り消された商標権の回復を求め、知財高裁に審判の取消(取消は不当なので戻せという主張)を求めた例です。

 商標法では、登録された商標が3年間使われていない場合、誰でも取消を求めることができます。(商標法第五十条)

 ここで取り消された側は、自社のホームページに該当の商標が使われていたと主張。
 証拠として、アーカイブに記録されたホームページを示しました。


 
 実はアーカイブ(www.archive.org)というWEBページの存在は、判決で初めて知りました。
 調べてみると、本事務所のページ(旧ホームページアドレス)も、いつのまにか記録されていました。
 

http://web.archive.org/web/*/http://www3.zero.ad.jp/tizai より引用

アーカイブのウェイバックでの検索結果

 ただ、どういう基準で記録されているのかは、全く不明です。
 世界中のWEBページを保存すれば、大変な容量になるかと思います。
 しかし、定期的に保存されていれば、ちょうど監視カメラの映像のように証拠性が高いと思います。


 さて、裁判官の判断ですが、

 意匠の事件では、アーカイブでのホームページの収録日時を証拠として採用し、この結果、意匠権は無効であり差止請求は権利の濫用としました。

 判決の中で、次のようにアーカイブの有効性に付いて述べています。

「米国NPOインターネット・アーカイブ
は,1996年,全世界のウェブの収集を開始し,2001年,100テラバイ
ト,1600万サイト以上の巨大なコレクションとなった本件ARCHIVEの公開を
Wayback Machineにより開始したこと,世界知的所有権機関の特許協力条約(PCT)
国際出願の国際調査及び国際予備審査の実務を規定するガイドラインは,ウェブサ
イトに掲載された公開情報の公開日を知るための手段の1つとして,本件ARCHIVEを
挙げていることが認められる。また,甲20及び21の各1,2によれば,平成1
5年12月9日時点の被告ホームページでは,被告製品1及び2の写真に「※意匠
登録申請済※」と付記されているが,同年2月27日時点の被告ホームページで
は,被告製品1及び2の写真に上記のような付記がないことが認められるところ,
この点は,平成15年5月22日に出願された本件意匠権の出願経過に合致してい
る。これらの事実からすると,本件ARCHIVEの示す収集内容及び日付は,十分信用す
ることができるものと認められる。」
(平成16年(ワ)第10431号 意匠権侵害差止請求権不存在確認請求事件 判決文 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/D9D0FBAD0FC72467492570FC000222D3.pdf
より抜粋)

 一方、商標の事件では、アーカイブの記録の証拠性が否認されました。

「インターネット・アーカイブ(http://www.archive.org)は,ウェブサ
イト及びマルチメディア資料のアーカイブ(保存)を行っている民間団体
る。」
 「同団体の運営するサイトの一つとして「ウェイバック・マシン」
がある。このサイト(http://www.archive.org/web/web.php)は,その性
質上日々絶え間なく変化するインターネットのウェブサイト上のデータ
を,1996年以降,コンピュータプログラムを使用して自動的に,かつ
定期的に保存し,時系列にしたがってデータベースとして蓄積させること
により,特定のウェブサイトが過去の一時点に,どのような内容であった
かを後に遡って見ることができるというサービスを提供している。」

「ウェイバック・マシンについて,利用規約に記録内容の正確性
について保証しないことが記載されている上(乙9),現に,ウェイバック
・マシンに記録されている日経新聞のウェブサイトの内容について,真実と
異なる内容が表示されている例が存在すること(乙11の1ないし5,12。
なお,このことは,原告は積極的に争っていない。)に照らせば,甲19な
いし24をもって,直ちに原告トップページにおいて平成17年5月20日
以降本件吹出し切替画像が閲覧可能な状態となっていたことを認めることは
できない」(平成18年(行ケ)第10358号 判決文 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/D9D0FBAD0FC72467492570FC000222D3.pdfより抜粋)

 判決でも証拠性が認められ、国際調査にも用いられている有用なものですが、
知財高裁の判決では、証拠となりませんでした。

 ここで、問題になったのは、日時の信頼性です。
 上の商標の例では、電子メールの日時も争われましたが、改竄容易ということで証拠にならないとされました。

 今後アーカイブの証拠性がどう判断されるかは、個々の事件の内容によるかと思いますが、少なくとも日時の証明手段としては弱いということです。

 ここに示した例では、信頼できる正確な日時とともにホームページを保存すれば、裁判において証拠として採用されるであろうことを学習できます。

 現在では、タイムスタンプという電子的な日時証明(存在証明)を使用することができ、これを使えば相当に信頼性の高い公開の証拠となります。

 また、タイムスタンプは改竄が不可能である(後から修正できない)ので、ホームページだけでなく、公開しない私文書を電子化し、タイムスタンプを行うことで、後に存在の証拠とすることもできます。

 本事務所では、ホームページ等の電子文書に、確定日付を付すサービスを始めます。

 ご依頼により、電子文書に行政書士の電子印鑑を付し、更にタイムスタンプを付すことで、「存在時確認署名」を行います。

 これを行えば、タイムスタンプを行った時点における、存在に疑義を挟む余地が無いので、後の紛争を回避し、もしくは異議を申し立てる等の際には、有力な存在証拠となります。

 本事務所のタイムスタンプが、有効に利用され、紛争を未然に回避し、または証拠になって裁判で勝つことがあるかもしれません。

2007.10.11

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