著作物性(著作権の対象となる著作物かどうか)が争われた例
 
 一生懸命調べ、取材し、考えて創作したものは、すべて著作権があると思われがちです。
 それで、著作者(制作者)としては、一部でも無断で利用(コピー、複写、盗用)されれば、著作権侵害である、削除せよ、賠償せよ、謝れと主張したくなるものです。

 しかし、権利を主張する前に、制作(製作)、創作したものが、そもそも著作権の対象である著作物なのかというところから考えなくてはなりません。
 
 子供の落書きや、普通にデジカメで撮った記念写真が著作物と認められる一方、法廷まで傍聴に行って取材した記事が著作物では無いとされた例もあります。

 権利とされるということは、他人を排除(不利益を与える)するだけの力を持つということでもあります。
 
 それには、それだけの価値を認められる必要があるわけです。

 非常にあいまいです。

 結局のところ、著作権法に基づき裁判官に判断を仰ぐことになります。

 それで権利が無いとされれば、提訴者は不用意な権利主張は無意味であると知り、第三者は必要以上のおそれをいだいて新たな利用の可能性を絶つことは無いと知ります。

 著作権侵害だと訴えられた人には、名誉毀損であると反訴する権利が生じます。

 一方、権利があると知れば、人の精神活動としての創作物を価値のあるものとして尊重し、大事にしなくてはならないと知ります。

 すなわち著作物性(法上の著作物)の正しい判断は、著作権(知的財産)を有効利用する上で、不可欠な事項です。

 以下の裁判例は、著作権の根源である、著作物性を理解する一助となるかと思います。

 
 
 (1)CAD図面に著作権はあるか。 →著作権無し
   規則に従って作画しただけであり、創作性が認められない。
   平成21年7月9日判決
 

 
 (2)裁判傍聴記は「著作物」に当たるか。 → 著作物でない。

 「事実の伝達にすぎない」ので創作性が認められない。
 平成20年7月17日判決



 (3)占いの本から、算出する方法などを利用したことは著作権侵害か → 侵害でない。

 書籍の複製権、翻案権、同一性保持権のいずれにもあたらない。
  同一性はアイデア部分であり、表現それ自体でない。
  平成20年6月11日判決



  (4)パズルに著作物性はあるか。 → 問題には編集物としての著作権がある。
 平成20年1月31日判決  平成18年(ワ)第13803

  原告主張:どれとどれを採用するかは,作者の“腕の見せ所”であり,そこに著作物性が発生する。

  被告主張:パズルにおいては,その題材となるアイデアや解法それ自体は著作物ではなく,具体的に表現された問題文や解答の説明文(表現)が著作物性判断の対象である。

  裁判所判断:特定のパズルを具体的に表現した点において,作者による個性的な創作的表現があると認められるから,これを編集著作物性を有する著作物として保護すべきものと認められる。


                   
 (5)通販ホームページの商品写真は著作物か。 →著作物である 
   平成18年3月29日判決


                  
 (6)ニュースの見出しに著作権はあるか。 →著作権なし
   平成16年03月24日判決
 


                  
 (7)インターネットでの職業適性テスト問題に著作権はあるか →著作権なし
    平成14年11月15日判決


         

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