IPWO 矢澤知財行政書士事務所
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著作物性(著作権の対象となる著作物かどうか)が争われた例>
著作物性を争った例 : CAD図面に著作権はあるか。
【概要】
原告は、被告の製品のカタログ(光電スイッチ,光ファイバーセンサー等)を基に有償で349枚のCAD(コンピュータで描いた構造図)図面を作成した。
被告は、このCAD図面を顧客にCD−ROMで頒布し、またウェブサイトでダウンロード可能とした。
原告は、これを著作権侵害として損害賠償請求。
被告は、対価を支払っているし、そもそも著作物ではないと反論
CAD:Conputer Aided Design (コンピュータを利用した設計図面)
【原告の主張】
本件CAD図面は著作物である。
「CAD図面に対する作者の技術思想やあるべき姿の期待と憧れ」(思想又は感情)を「寸法・数値・形状を,原点,一筆書き,寸法記載など作者固有の個性を交えて」(創作的に表現したもの)で学術的な範囲に属するものである。
被告は,本件CAD図面を無断で複製又は翻案して被告CAD図面を頒布した。
被告ウェブページに被告CAD図面を掲載して顧客がダウンロードして利用できるようにした。
被告は,原告にプレス原価程度に押さえたCD−ROMの作成料を支払っただけで,CAD図面の使用許諾料については今後取り決めていくと説明していた。
CAD図面の頒布を止めデータを削除せよ。
CD−ROMの使用許諾料相当損害金1868万1250円、ウェブページへの掲載による使用許諾料相当損害金1億0269万9657円を支払え。
【被告の主張】
本件CAD図面に著作物性は無い。
CAD図面は基本的にJIS規格に準じて作成されている。
線の種類、図形の投影方法,文字のフォントまでもが定められており個性的な表現方法が禁じられており、本件CAD図面の著作物性はない。
本件CAD図面は著作物ではないから,著作権法上の複製又は翻案ではない。
被告は,原告に対し,CD−ROMの作成料に加えてCAD図面の作成料も支払っている。
【裁判所の判断】
原告が主張する創作は,いずれもアイデアそのものであって表現に当たらないものであるか,表現であっても極めてありふれたものにすぎず,それ自体として創作性のある表現であることを基礎づけるものとはなり得ない。
すなわち著作権法上保護される著作物と認めることはできない。
平成21年7月9日判決言渡
平成19年(ワ)第13494号著作権侵害差止等請求事件
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090716172918.pdf
この記載は、著作権法上で定義された「著作物」とは何かを理解する一助として、本事務所により選択した判決をまとめたものです。
正確に理解するには、判決文を参照ください。
なお、ここで理解できることは、
(1)規格によって作成するものには、思想または感情を創作的に表現することが難しい。
(2)カタログ図面をCAD化するだけでは、著作物とすることは難しい。
(3)著作権の帰属(譲渡されるのかどうか)についての合意(契約書等)が重要
ということが言えます。
2009.08.11
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