注目の技術(31)
人工海水
(海水魚の淡水飼育)
2010年8月17日のテレビ東京「ガイアの夜明け」は衝撃的でした。
世界で捕獲禁止の流れにあるマグロ、それも本マグロ(黒マグロ)を陸上で養殖しようとする技術の紹介でした。
しかも可能性ではなく、すでに実用化が進んでいるというものです。
今では寿司ネタがいろいろあって、材料には困らないと言っても、マグロが無ければ鮨(スシ)屋は成り立たないと誰でも思うでしょう。
中トロ (筆者撮影)
そのマグロは、世界中から集めていて、日本独自の食文化を誇っていたものです。
それが、中国の台頭などにより、香港の店に最上のマグロが競り落とされるなど、
ますますマグロの入手が難しくなっていることは、周知のことです。
今まで生魚を食べなかった中国の人が、上等な鮨ネタの味を覚えてしまえば、日本人への供給が減ってしまうことは火を見るよりも明らかなこと。
ですから、マグロを養殖しようとする技術には期待できます。
スシネタが安定供給され、枯渇の心配をしなくて良いのですから。
しかし、マグロを淡水で飼えるというのですから驚きです。
「ガイアの夜明け」放送画面の一部を引用
(鯛と金魚とが同じ水槽で泳ぐ)
もちろん、真水ではマグロが生きられないので、真水に入れる添加剤が必要です。
それが注目の技術です。
単に真水に海水の成分を加えて海水にするのではなく、海水魚が生きてゆける成分を添加するというところがミソです。
なんでも、淡水魚も海水魚も、その血液の塩分濃度は変わらないというのです。
ですから、魚の血液に着目すれば、どんな魚でも生きられる水ができるのだそうです。
好適環境水 (登録商標第5192101号)
番組では、その成分を特許出願中の秘密の白い粉としていましたが、
特許出願すればそれは公開されます。
新技術の公開の代償として、保護(権利化)されるわけですから。
開発者は、たくさんの特許を出願していますが、その一例を紹介すると、成分の概要がわかります。
特許公開2010-9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水性生物及び淡水性生物の人工飼育に用いる飼育水であって、
飼育水中に少なくともナトリウム、カルシウム、および、カリウムを添加し、それぞれ
の添加量はカリウムは0.0951(g/l)より多く0.380(g/l)以下であり、カルシウムは0.0993(
g/l)より多く0.401(g/l)以下であり、ナトリウムは2.777(g/l)より多く10.656(g/l)以下
となるように添加することを特徴とする人工飼育水。
IPDL
(特許電子図書館)での公開特許公報から引用
ふんだんな水さえあれば、山の中でマグロが養殖できるのです。
豚や鶏(ニワトリ)を飼うように鮪(マグロ)が養殖できるのです。
夢のような技術です。
海が無い県で、海水魚を特産にできるのですから。
どうぞゆっくりと実用化を進めてください。
常識を覆すには時間が必要なのですから。
2010.09.21
特許公報に見る技術
(「
かんたん特許検索
」へのリンク)
学校法人加計学園の出願中特許例
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