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 映画を写すと犯罪(盗撮防止法)施行 
月8日封切りの日本映画、HERO(ヒーロー)を、さっそく見てきた。

 キムタク(木村拓也)の扮する検事が活躍する。 
 TVドラマは好きであったので、久々の続編に期待して早く見たかったのだ。

 まだ公開2日後の平日月曜日、しかも最終回を狙って行ったのだが、意外なほど観客が多かった。
 競合の注目映画が少なかったためもあるだろうが、TVでの宣伝が観客動員に大きく貢献しただろうと思う。
 
 上映前には前宣伝とともに、見慣れない警告画面が流れた。
映画の撮影は犯罪ですという画面だ。

 そうだ、8月30日に盗撮防止法が施行されたのだ。
映画の撮影は犯罪ですのお知らせ

 今までも映画の撮影は禁止されていたと思われるだろうが、法的には取り締まることができなかったのだ。

 著作権法上想定していなかったことなので、禁止規定が無く、逆に第三十条では(私的使用のための複製)が認められており、映画を撮影した場合、この条文により適法とせざるを得なかったのだ。

 今回施行された 「映画の盗撮の防止に関する法律」(平成十九年五月三十日法律第六十五号)では、映画館での録画、録音は私的使用にあたらないと明文化された。

 これにより、映画の撮影は著作権法違反となる。
(上映後8月を経過した映画等、適用外はある。)
 
 罰則は、なんと10年以下の懲役、または1000万円以下の罰金となる。

 つい先月までは、なんのお咎(とが)めも無かったのに、今度は映画館でビデオカメラなどを使用すれば、警察が堂々と動けることになり、逮捕、起訴され、裁判所により量刑が言い渡されることになる。

 法治国家の元、罪刑法定主義により、堂々と裁かれるのだ。

 映画関係者としては、新作が盗撮されてネットで流され、海賊版が発売され、観客が減る、売り上げが落ちる、新作に投資できないといった負の連鎖が解消されるかもしれないと新法施行の効果に期待しているところだろう。

 本法制定の背景には、暴力団の収益手段を封ずるという意味合いもあったようだ。
 (警察庁、生活環境課文書、映画の盗撮の防止に関する法律の施行について
 http://www.npa.go.jp/pdc/notification/seian/seikan/seikan20070806.pdf

 似たような例として、本屋に陳列された本の内容を携帯電話で撮影することが挙げられる。
 しかし被害が少ないということで、新法制定というところまでには至らないのだろう。
 著作権に関する規制は、毎年更新されるが社会の変化に追いついて行けない。

 今回、盗撮防止法として著作権法とは別の法律ができたということは、今後も新たな問題に対し、新法が制定されるかもしれない。

 その方が分かり易くて良い。

 このように今まで問題なかったことが、明日には違法となる可能性がある。
それらは、いずれも創作者、演者、等、真っ当な権利者に対し、正当な利益がもたらされるように働くのだから、それまでは彼らの見えない財産(知的財産)を搾取する者が多かったことに気づかなくてはならないだろう。

 見えないものに価値を見いだせることは、人間にしかできないことである。
そういう意味では、社会が人間らしくなってきたのかもしれない。



条文全文」 http://law.e-gov.go.jp/announce/H19HO065.html より転載

映画の盗撮の防止に関する法律
(平成十九年五月三十日法律第六十五号)

(目的)
第一条  この法律は、映画館等における映画の盗撮により、映画の複製物が作成され、これが多数流通して映画産業に多大な被害が発生していることにかんがみ、映画の盗撮を防止するために必要な事項を定め、もって映画文化の振興及び映画産業の健全な発展に寄与することを目的とする。

(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一  上映 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第二条第一項第十七号に規定する上映をいう。
二  映画館等 映画館その他不特定又は多数の者に対して映画の上映を行う会場であって当該映画の上映を主催する者によりその入場が管理されているものをいう。
三  映画の盗撮 映画館等において観衆から料金を受けて上映が行われる映画(映画館等における観衆から料金を受けて行われる上映に先立って観衆から料金を受けずに上映が行われるものを含み、著作権の目的となっているものに限る。以下単に「映画」という。)について、当該映画の影像の録画(著作権法第二条第一項第十四号に規定する録画をいう。)又は音声の録音(同項第十三号に規定する録音をいう。)をすること(当該映画の著作権者の許諾を得てする場合を除く。)をいう。

(映画産業の関係事業者による映画の盗撮の防止)
第三条  映画館等において映画の上映を主催する者その他映画産業の関係事業者は、映画の盗撮を防止するための措置を講ずるよう努めなければならない。

(映画の盗撮に関する著作権法の特例)
第四条  映画の盗撮については、著作権法第三十条第一項の規定は、適用せず、映画の盗撮を行った者に対する同法第百十九条第一項の規定の適用については、同項中「第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項」とあるのは、「第百十三条第三項」とする。
2  前項の規定は、最初に日本国内の映画館等において観衆から料金を受けて上映が行われた日から起算して八月を経過した映画に係る映画の盗撮については、適用しない。

   附 則

 この法律は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行する。


2007.09タイムマーク

読売新聞記事
 
 読売新聞 2009.08.18記事より引用 
 映画館で盗撮された映画をインターネットで流出させたとして、京都府警は堺市の男性を逮捕。
 著作権法違反(公衆送信権の侵害) 国内の映画館で盗撮された映画のネット流出が摘発されたのは初めて。(日本国際映画著作権協会)

 盗撮した直接の容疑ではありませんが、盗撮された映画を、ファイル交換ソフトでネット上に流したという容疑です。
 
 現在は、違法と知りながら画像をダウンロードする行為も著作権法違反となります。

 
著作権法 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO048.html 

第三十条
 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
三 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合
読売新聞
 読売新聞2010.12.7記事の一部
 ファイル共有ソフトで日本公開前の米映画をネット上に流すためにダウンロードしたとして、懲役1年6月、執行猶予3年 2010.12.6京都地裁

 2011.01.10 追加

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