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 「知財の重要性は侵害されて初めてわかる」



財(知的財産)という言葉が、ずいぶん一般的になってきたように思う。
それとともに、これ(知財)をどれだけ重視しているかどうかが、国の文化水準を決める尺度にもなっているように見える。

そのような中で、中国の国営遊園地における模倣が知財軽視の例として報道されたことは、まだ耳目に新しいと思う。

米国のテ゛ィス゛ニーラント゛や、日本のキティーちゃんなどのキャラクターが勝手に模倣され、利用されていたことである。

当初は別物であると主張していたが、世界的な注目を浴びて、急遽関連キャラクタを撤去したことが痛々しい。

中国では、知財の意識が低く、日本の有名なキャラクターが中国で登録され、本物の日本製品を中国に輸出すると侵害で取り締まられるという、これではまるで無法者社会である。
(例:クレヨンしんちゃんのキャラクター付き製品を中国へ輸出すると、中国での権利者に対する権利侵害になる)

だが、ここでは中国の知財意識の低さを問うているわけではない。

知的財産、すなわち形の無いものに対し、価値を見いだし、それを尊重し、保護するに至る過程は、容易でないということ、時間がかかるということを言いたい。

「衣食足りて礼節を知る」ということわざが、知財にもそのまま当てはまると思う。

多くの人の生活が満たされ、文化水準が上がって、初めて芸術などの価値を感じ取れるということだ。

あたりまえのことだと言われそうだが、日本がまさに、今の中国の状況にあったことがある。

それどころか、ほんの近年に入って、ようやく知的財産に目覚めるに至ったというべきである。

戦後日本は先進国の模倣をして、技術を習得したといえる。
もちろん、それには素養があったからだという意見もある。
だが、古くから模倣の国であったことは、漢字(漢の国の言葉を模倣)や呉服(呉の国の服を模倣)など枚挙にいとまがない。

鉄道も、法律も、医療も、すべての生活面にわたって結局は模倣の歴史である。

発明にしても、江戸時代の平賀源内が日本最初の発明家として、有名であり、
その発明品と言われる、エレキテルは、当時の人々が病気治療などで恩恵を受けたとある。

だが、エレキテルは平賀源内が発明したものではなく、オランタ゛で発明されたものの残骸を見て、それを再現したにすぎない。

これはあきらかに模倣そのものである。
 
日本画は中国画を模倣(お手本)としてきたという事情を記した新聞記事
朝日新聞2007.06.06
芸術面でも、日本独特と思われる日本画の技法は、中国画を模したものであるという例が新聞に紹介されていた。


上の中国の例で、日本のキャラクターが中国で登録されている件を上げたが、
これは決して違法ではない。

中国では法律に則(のっと)って、権利化することを公告した上で登録になっているという。
つまり世間に、これを登録(権利化)して良いかと公示しているのだ。
それに対し日本側が異を唱えなかったのだから、中国当局は権利化したのだ。

そんなことは日本では考えられないことと、思うかも知れないが、
ほんの数十年前の日本でも、他国の技術を日本に持ってきた者が、権利者になることができていた。(外国での公知は拒絶の理由でなかった。)

現に自分でも経験がある。
北欧製のマホカ゛ニーを使った折り畳み収納机を使っていたところ、
その後、日本の会社で全く同じものが実用新案として登録されていた。
つまり、外国で便利な商品を見つけ、それを日本に持ってきて出願すれば登録できたのだ。
すなわち輸入特許なる言葉さえあったのだ。
(現在では、外国公知は拒絶理由になっているため登録できない。)

また、商標のシャネルやヒルトンなど外国での著名名称が日本で登録できなくなったのは、ごく最近のことである。

決して中国の現状制度を見下すことはできない。

今でこそ、日本では著作権があちこちで問題化されているが、いまだにウイニーやYou Tubeなどを見るまでもなく、不法コピーが蔓延している。

そして、不法コヒ°ーは製品を普及させる上での必要悪であるという考えも根強いのではないかと思う。
(不法コヒ°ーは宣伝手段となっているのだから正当化されるべきであるという考え。)

だから、お隣の国の知財の状況をどうこう言えるほど、日本の知財尊重の意識が高いとは言えない。

しかしだからと言って、文化水準が上がって、人々の知財意識が上がることを待てという論は、暴論であろう。

最初から(生活水準が上がる前に)、知的財産は重要であり、見えないものの価値を認めるという思想を育むことは出来ると思う。

まずは、一人一人が、創作をすること、表現をしてみることが、知財を尊重する意識を高める一歩だと思う。

自分でたいへんな思い、たいへんな時間を使ってやっと仕上げる。
そうやって作ったものは、まさに自分の宝であり、生きた証でもある。

それをワンクリックで引用、模倣され、自分のものではないように扱われれば、怒りがこみ上げるだろう。

どうしてそんなこと(侵害)で怒るのだろうという意識にある者は、模倣されてみるべきなのだ。

そうやって、ようやくその行為(侵害)が相手の心のなかに怒りを生じさせる行為であると知るのだ。


2007.09.03
シャネル は、シャネル エス アー エール エル(スイス国)の登録商標第1977772号等
ヒルトン は、ヒルトン インターナショナル カンパニー(イギリス国)の登録商標第5003741号等です。

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