2010.07.18 工業所有権情報研修館の審決速報より  (http://www.ipdl.inpit.go.jp/Shinpan/shinpan.htm) 商標登録異議2007−900349を全文転載 ----------------------------------------------------------------------(注意) 著作権の関係上、図面が掲載されていない場合があります。 異議の決定 異議2007−900349 沖縄県那覇市高良1丁目2−9  商標権者   上原 俊一 東京都豊島区西池袋1丁目5番4号 池袋センチュリ−21ビル401号 谷山守国際特許事務所  代理人弁理士 谷山 守 ドイツ連邦共和国 91074 ヘルツオーゲンアウラッハ ヴュルツブルゲル ストラーセ 13  商標登録異議申立人   プーマ アーゲー ルドルフ ダスラー スポーツ 東京都千代田区丸の内3丁目4番1号 新国際ビル9階 不二商標綜合事務所  代理人弁理士 小谷 武 東京都千代田区丸の内3丁目4番1号 新国際ビル9階 不二商標綜合事務所  代理人弁理士 木村 吉宏      登録第5040036号商標の商標登録に対する登録異議の申立て事件にについてされた平成20年7月2日付け異議の決定に対し、知的財産高等裁判所において決定取消の判決(平成20年(行ケ)第10311号、平成21年2月10日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり決定する。  結 論    登録第5040036号商標の商標登録を取り消す。  理 由   第1 本件商標  本件登録第5040036号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成17年6月21日に登録出願され、第25類「Tシャツ,帽子」を指定商品として平成19年4月13日に設定登録されたものである。  なお、本件商標の「SHI−SA」の文字の下に二段に表された欧文字は、小文字の「n」「g」「h」が他の大文字と同じ大きさで表記されている。(以下「OKInAWAn ORIgInAL」、「gUARDIAn ShIShI−DOg」と表記する。)   第2 引用商標 1 本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するものとして職権により引用する登録第711054号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、昭和39年9月26日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として昭和41年6月22日に設定登録され、その後、4回に亘り商標権の存続期間の更新登録がなされ、平成18年10月25日に指定商品を第25類「下着,寝巻き類,その他の被服(運動用特殊衣服を除く)」とする指定商品の書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 2 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用し、本件商標が商標法第4条第1項第15号又は同項第19号に該当するものとする登録第3324304号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)のとおりの構成からなり、平成6年12月20日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として平成9年6月20日に設定登録され、その後、平成19年3月13日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。  なお、引用商標2は、「平成21年2月10日 知的財産高等裁判所 平成20年(行ケ)第10311号判決(以下「原判決」という。)」の引用商標1と同一である。   第3 本件商標に対する取消理由  当審において平成21年7月2日付けで商標権者に対し通知した取消理由は、要旨次のとおりである。 1 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標から生じる観念  本件商標は、別掲(1)のとおりの構成からなるところ、本件商標の動物図形からは直ちに特定の動物を想起しうるものではなく、「SHI−SA」という文字は「シーサ」「シ・サ」「シサ」と様々に読めるものであって直ちに特定の観念を想起させるものではないが、「OKInAWAn ORIgInAL」、「gUARDIAn ShIShI−DOg」という文字から「沖縄のオリジナル」「保護者、守護者」「獅子犬」などの意味を読みとることができ、「SHI−SA」の文字及び動物図形と相まって、沖縄に見られる伝統的な獅子像である「シーサー」の観念が想起される(原判決15頁4行から11行)。 (2)本件商標から生じる称呼  本件商標からは、「SHI−SA」の文字あるいは上記のような沖縄の獅子像の観念から「シーサ」あるいは「シーサー」の称呼が生じる(原判決18頁1行から2行)。 (3)引用商標1から生じる観念  引用商標1は、別掲(2)のとおりやや図案化された「シーサー」の文字からなるところ、当該「シーサー」の文字から、沖縄に見られる伝統的な獅子像である「シーサー」の観念が想起される。 (4)引用商標1から生じる称呼  引用商標1は、「シーサー」の文字に相応し、「シーサー」の称呼を生じる。 (5)本件商標と引用商標1との比較  本件商標と引用商標1は、「シーサー」の称呼を共通にするものである。  なお、本件商標から生じる「シーサ」の称呼と引用商標1から生じる「シーサー」の称呼を比較しても、両称呼の差異は、語尾における長音の有無の微差にすぎないから、両称呼それぞれを全体として一連に称呼するときは、相紛れて聴取されるおそれがあるものであり、本件商標と引用商標1は、称呼において類似する。  したがって、本件商標と引用商標1は、外観において相違するとしても、「シーサー」の観念及び「シーサー」の称呼を同じくする商標であるから、両者の外観、観念及び称呼によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は類似する商標というのが相当である。 (6)指定商品の類似  本件商標の指定商品「Tシャツ,帽子」は、引用商標1の指定商品「下着,寝巻き類,その他の被服(運動用特殊衣服を除く)」に包含されている。 (7)小括  したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものである。   2 商標法第4条第1項第15号について (1)広義の混同を生ずるおそれについて  商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品又は指定役務(以下「指定商品等」という。)に使用したときに、当該商品等が他人の商品又は役務(以下「商品等」という。)に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品等が右他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ(以下「広義の混同を生ずるおそれ」という。)がある商標を含むものと解するのが相当である。けだし、同号の規定は、周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものであるところ、その趣旨からすれば、企業経営の多角化、同一の表示による商品化事業を通して結束する企業グループの形成、有名ブランドの成立等、企業や市場の変化に応じて、周知又は著名な商品等の表示を使用する者の正当な利益を保護するためには、広義の混同を生ずるおそれがある商標をも商標登録を受けることができないものとすべきであるからである。そして、「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである(平成12年7月11日 最高裁判所第三小法廷 平成10(行ヒ)85)。 (2)本件商標と引用商標2との類似性の程度及び取引の実情 (ア)本件商標と引用商標2は、アルファベットの文字(「SHI−SA」と「PUMA」)が横書きで大きく表示されている点、その右上方に、四足動物が右側から左上方へ向けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見た姿でシルエット風に描かれている点で共通する。また、本件商標における「SHI−SA」の文字と引用商標2における「PUMA」の文字は、いずれも横長の長方形の枠内にはめ込まれたかのごとく太字で表記され、個々の文字は縦長となっている点で共通している。そして、両商標における動物図形は、その向きや基本的姿勢のほか、跳躍の角度、前足・後足の縮め具合・伸ばし具合や角度、胸・背中から足にかけての曲線の描き方について、似通った印象を与える(原判決13頁23行から14頁8行)。  本件商標と引用商標2とは「SHI−SA」ないし「PUMA」の文字と動物図形との組み合わせによる全体的な形状が共通している(原判決14頁25行から15頁1行)。  本件商標における動物図形は、たしかにその向きや基本的姿勢、跳躍の角度、前足・後足の縮め具合・伸ばし具合や角度、胸・背中・腹から足にかけての曲線の描き方において上記「PUMA」ブランドの商標と似ている点がある(原判決22頁5行から8行)。  「PUMA」ブランドのピューマを記憶している取引者・需要者は、本件商標に接したときに「PUMA」ブランドのピューマを連想することがある(原判決22頁23行から25行)。  してみれば、本件商標と引用商標2とは、一定の類似性を有しているものということができる。 (イ)商標法第4条第1項第15号は、混同のおそれのある商標に関する不登録事由の総括規定ということができる。すなわち、本号には「(第十号から前号までに掲げるものを除く。)」と括弧書きがあることから、同項第10号から同項14号までに該当する商標以外で混同のおそれのある商標に適用されるものといえる。  商標法第4条第1項第15号は、抽象的、一般的に規定し、そのために同項第10号から同項14号までを除いたものであり、同項第10号から同項14号までは、混同のおそれのある商標について「商標(標章)の同一又は類似」及び「商品・役務の同一又は類似」の概念を用い定型的、技術的に適用して法的安定化を図り、一方、同項第15号は、それ以外で商標ごとにその取引の実情に応じて個々具体的に適用して具体的妥当性を狙ったものといえる。 (ウ)原判決において、商標権者(原告)が、平成20年10月21日付けで知的財産高等裁判所へ提出した証拠説明書によれば、以下に示すように、同人は、商品「Tシャツ,ランニングシャツ」について、「OKInAWAn ORIgInAL」、「gUARDIAn ShIShI−DOg」の文字を併記しないで使用している。 甲第26号証の2右上の写真のピンク色のTシャツ、 甲第27号証の1の1下の写真の青いTシャツ、 甲第27号証の3の1中央の写真の黄色いTシャツ、 甲第27号証の3の1中央の写真の白いランニングシャツ、 甲第27号証の5の1下の写真の黄色いTシャツ、 甲第27号証の6の1中央の写真の青い文字が記載された白いTシャツ、 甲第27号証の6の2上の写真のジャマイカの国旗とともに表した「SHI−SA」の文字及び動物図形、 甲第27号証の7の1右上の写真のピンク色のTシャツ、 甲第27号証の8の1下の写真のピンク色のTシャツ、 甲第27号証の8の2上の写真の2段目右側の黒いのTシャツ、 甲第28号証の上から2番目の写真の「SHI−SA Tシャツ 動物図形 Kid’s」の黄色い広告表示、 甲第29号証の1のジャマイカの国旗ととも「SHI−SA」の文字及び動物図形を表した白いTシャツ、  同日付けの証拠説明書によれば、商標権者は、本件商標の指定商品とは異なるが、商品「泡盛,エコバック,携帯クリーナー」についても、「OKInAWAn ORIgInAL」、「gUARDIAn ShIShI−DOg」の文字を併記しないで使用している。 (商品「泡盛」についての使用例) 甲第27号証の1の1中央の写真、 甲第27号証の4の1下の写真、 甲第27号証の4の2下の写真、 甲第27号証の8の1中央の写真、 (商品「エコバック」についての使用例) 甲第26号証の2中央右側の写真の白い袋、 甲第27号証の3の1中央の写真の黒っぽい袋、 甲第27号証の3の1中央の写真の白い袋 甲第27号証の8の1下の写真の白い袋、 (商品「携帯クリーナー」についての使用例) 甲第27号証の4の1中央の写真、 甲第27号証の4の2中央の写真、 甲第27号証の7の2上の写真、 (エ)本件商標は、その構成態様から、中央に大きく表された「SHI−SA」の文字と右上部動物図形の組合せ部分(以下「要部」という。)が独立して自他商品識別機能を果たすものと判断するのが相当である。  また、上述したように、商標権者は、「OKInAWAn ORIgInAL」、「gUARDIAn ShIShI−DOg」の文字を併記しないで商品に使用している場合があることから、本件商標は、全体が一体不可分の商標とはいい得ないものである。  そして、本件商標の要部と引用商標2とを比較すると、両者は「SHI−SA」ないし「PUMA」の文字と動物図形との組み合わせによる全体的な形状が共通している。また、動物図形は、その向きや基本的姿勢、跳躍の角度、前足・後足の縮め具合・伸ばし具合や角度、胸・背中・腹から足にかけての曲線の描き方において引用商標2と似ている点があることから、本件商標の要部と引用商標2とは、外観において共通する点を有している。  そうとすれば、上述したように一定の共通性が認められる本件商標と引用商標2との類似性は、具体的な取引の実情を取り込んで判断することによって、より一層強いものとなる。 (3)引用商標2の周知著名性及び独創性の程度  当審において申立人から提出された甲第26号証ないし甲第28号証及び知的財産高等裁判所において提出された乙第2号証、乙第5号証ないし乙第7号証によれば、引用商標2は、周知著名性を有し、ピューマの図柄の特徴により独創性を有しているものと認めることができる。  なお、原判決は、引用商標2の周知著名性及びピューマの図柄の特徴について、以下のように認定している。  引用商標2はドイツのスポーツシューズ、スポーツウェア等のメーカーであるプーマ社の業務を表す「PUMA」ブランドの商標として著名である(原判決17頁19行ないし21行)。  ピューマの図柄は、体全体の輪郭が流れるような曲線によって描かれている点や、先端だけ若干丸みを帯びた細長い尻尾が右上方に高くしなるように伸び、大きく後ろへ伸びた後足と対照をなしている点で特徴的である(原判決21頁7行ないし10行)。  「PUMA」ブランドは、上記のような特徴的なピューマの図柄によって取引者・需要者に印象付けられ、記憶されているものということができる(原判決22頁2行ないし3行)。  また、商標権者は、準備書面(第2回)において、「引用商標は一定の分野において周知著名であることは何ら争うものではない(準備書面12頁21行ないし22行)」「引用商標が、特にスニーカーについて周知著名であるとしても(準備書面17頁14行)」「引用商標が、スニーカー等について周知著名であることを敢えて争うものではない(準備書面18頁7行ないし8行)」と引用商標2の周知著名性について認めている。  さらに、商標権者は、第1回取消理由通知に対する意見書において、「創造商標であるかどうかという点も、商標法第4条第1項第15号の該当性に重要な意味を有するのであって、審理判断において十分に参酌されるべきものと考える。従って、上述の通り、引用商標において独創的な部分は、あくまでも具体的なピューマの図案であるにほかならず、四足動物を側面から描いたこと自体に独創性や創造性を有するものではない(意見書11頁11行ないし15行)。」と引用商標2の構成中、ピューマの図案の独創性についても認めている。 (4)本件商標の指定商品と他人の業務に係る商品との間の性質、用途又は目的における関連性の程度  本件商標の指定商品「Tシャツ,帽子」と申立人の業務に係る商品「スポーツシューズ,スポーツウェア」とは、いずれも日常生活やスポーツをするときに身に付けるものであり、その用途が一致する。また、当該商品は、いずれも主として繊維製品(織物等)を原材料とするものであって、ファッション性が重視される商品であるから、極めて密接な関連性を有しているものである。 (5)需要者の共通性  本件商標の指定商品「Tシャツ,帽子」と申立人の業務に係る商品「スポーツシューズ,スポーツウェア」とは、同一の会社で生産される場合も少なくないものであり、同一の店舗で販売されやすい商品であるから、両商品の需要者の相当部分が共通するものである。 (6)本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力  本件商標の指定商品「Tシャツ,帽子」は、特に、高額な商品ではないことから、その購入に際し特別に注意力を要するものとは認められない。  したがって、本件商標に接する指定商品「Tシャツ,帽子」の取引者及び需要者は、記憶の中にある引用商標2と目の前に存在する本件商標との細部の相違について、特別に注意を払うことなく、商品を購入する場合も少なくないものとみるのが相当である。 (7)小括  本件商標と引用商標2との類似性の程度、引用商標2の周知著名性及び独創性の程度や、本件商標の指定商品と他人の業務に係る商品との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すると、本件商標に接する取引者及び需要者は、本件商標をプーマ社の商品と誤って認識するおそれがないとしても、プーマ社と経済的又は組織的に何等かの関係がある者(いわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主)の業務に係る商品であると誤信し、その商品の出所について広義の混同を生ずるおそれがあるものとみるのが相当である。  したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものである。    3 商標法第4条第1項第19号について (1)商標法第4条第1項第19号の趣旨  商標法第4条第1項第19号の趣旨は、主として、外国で周知な商標について外国での所有者に無断で不正の目的をもってなされる出願・登録を排除すること、さらには、全国的に著名な商標について出所の混同のおそれがなくても出所表示機能の希釈化から保護することを目的とするものである。  そして、商標法第4条第1項第19号は、「(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されていることから、仮に、当該商標が同項第1号から同項第18号に該当しなくても(特に、出所の混同のおそれがなくても)適用されるものと解される。 (2)引用商標2の周知性について  上記第3 2(3)で述べたとおりである。 (3)商標法第4条第1項第19号における類似性の判断基準  商標法第4条第1項第19号における類似性の判断基準は、同項第11号におけるそれと基本的には同様であるが、上述したとおりの同規定の趣旨に鑑み、同項第11号においては、混同が発生するか否かが重視されるべきであるのに対し、同項第19号にあっては、他人の業務に係る商品等を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標とそれを有する著名な事業主との一対一の対応関係を崩し、希釈化を引き起こすような程度に類似しているか否か、すなわち、容易に他人の業務に係る商品等を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標を連想(想起)させるほど類似しているか否かを検討すべきものと解するのが相当である。 (4)本件商標と引用商標2との類否について  この点を考慮して、本件商標と引用商標2との類否について検討すると、本件商標と引用商標2は、アルファベットの文字(「SHI−SA」と「PUMA」)が横書きで大きく表示されている点、その右上方に、四足動物が右側から左上方へ向けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見た姿でシルエット風に描かれている点で共通する。また、本件商標における「SHI−SA」の文字と引用商標2における「PUMA」の文字は、いずれも横長の長方形の枠内にはめ込まれたかのごとく太字で表記され、個々の文字は縦長となっている点で共通している。そして、両商標における動物図形は、その向きや基本的姿勢のほか、跳躍の角度、前足・後足の縮め具合・伸ばし具合や角度、胸・背中から足にかけての曲線の描き方について、似通った印象を与える(原判決13頁23行から14頁8行)。  また、本件商標と引用商標2とは「SHI−SA」ないし「PUMA」の文字と動物図形との組み合わせによる全体的な形状が共通している(原判決14頁25行から15頁1行)。  そして、本件商標における動物図形は、その向きや基本的姿勢、跳躍の角度、前足・後足の縮め具合・伸ばし具合や角度、胸・背中・腹から足にかけての曲線の描き方において上記「PUMA」ブランドの商標と似ている点がある(原判決22頁5行から8行)。  さらに、「PUMA」ブランドのピューマを記憶している取引者・需要者は、本件商標に接したときに「PUMA」ブランドのピューマを連想することがある(原判決22頁23行から25行)から、本件商標は、容易に他人の業務に係る商品等を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている引用商標2を連想(想起)させるほど類似しているということができる。 (5)不正の目的について (ア)引用商標2は、上記第3 2(3)で述べたとおり、ドイツのスポーツシューズ、スポーツウェア等のメーカーであるプーマ社の業務を表す「PUMA」ブランドの商標として著名であること (イ) 商標権者は、上記第3 2(2)(エ)で述べたとおり、「OKInAWAn ORIgInAL」、「gUARDIAn ShIShI−DOg」の文字を併記しないで商品に使用している場合があること (ウ)商標権者が、平成20年12月22日付けで知的財産高等裁判所へ提出した証拠説明書の甲第32号証によれば、同人は、本件商標(図5)のデザインを決める前に、あくまでもシンプルにというところから、本件商標から「OKInAWAn ORIgInAL」、「gUARDIAn ShIShI−DOg」の文字を除いた図4のデザインを決定していること (エ)商標権者は、引用商標2についての周知著名性を十分認識していながら、あえてこれと類似する商標である本件商標の登録出願をしていること (オ)これらの事情を総合すると、商標権者は、本件商標の登録出願時及び登録審決時において、著名商標である引用商標2が有する信用又は名声に便乗して利益を得ようとの不正の目的をもって、本件商標の使用をするものと判断するのが相当である。 (6)小括  したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の規定に違反して登録されたものである。    4 まとめ  以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消すべきものである。    第4 取消理由に対する商標権者の意見  上記第3の取消理由に対し、商標権者は、要旨次のように意見を述べ、乙第1号証ないし乙第8号証(枝番を含む。)を提出した。 1 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標は、図形部分、「SHI−SA」の文字部分並びに二段横書きの「OKInAWAn ORIgInAL」及び「gUARDIAn ShIShI−DOg」の文字部分の構成要素を結合した結合商標であり、これによって商標の機能である商品識別機能、出所表示機能、品質保証機能及び宣伝広告機能を果そうとするものである。  したがって、本件商標は、あくまでも、これら図形部分、「SHI−SA」の文字部分並びに二段横書きの「OKInAWAn ORIgInAL」及び「gUARDIAn ShIShI−DOg」の構成要素から成る一体不可分の結合商標であり、これらの各構成要素の一つでも拾象すべきではない。  本件商標全体を見た場合、本件商標の上述の三つの構成要素は全体的にバランス良く配置されているのであって、「OKInAWAn ORIgInAL」及び「gUARDIAn ShIShI−DOg」の文字部分を商標の構成要素から排除しなければならない理由は全く存在しない。当該文字部分は、決して微少価値の存在ではない。 (2)本件商標から生じる観念について  本件商標の動物図形からは直ちに特定の動物を想起しうるものではなく、「SHI−SA」という文字は「シーサ」「シ・サ」「シサ」と様々に読めるものであって直ちに特定の観念を想起させるものではないが「OKInAWAn ORIgInAL」「gUARDIAn ShIShI−DOg」という文字からは「沖縄のオリジナル」「保護者、守護者」「獅子犬」などの意味を読みとることができ、「SHI−SA」の文字及び動物図形と相まって、沖縄にみられる伝統的な獅子像である「シーサ」の観念が想起される。 (3)引用商標1から生じる観念について  取消理由通知書において、引用商標1は「シーサー」の文字から沖縄に見られる伝統的獅子像である「シーサー」の観念が想起されると主張するが、全く独善的、我田引水的見解であるものと思料する。  どうして、引用商標1から沖縄の伝統的獅子像である「シーサー」の観念が想起されるのであろうか、極めて理解に苦しむものである。  引用商標1の外観を十分に吟味してもらいたい。  即ち、引用商標1は、単なる「シーサー」の文字ではない。この引用商標1は、「シーサー」の片仮名文字において、「シ」の部分が「星の図形」と「弓の図形」を加味したモノグラム化されているものである。  即ち、ドイツ語の「射る」の観念と「弓」のモノグラムを有する構成からすれば、引用商標1には、「射る」「弓」と言った観念が内包されていると看ることができる。  乙第1号証の1と同2は、引用商標1の商標詳細情報と商標登録原簿である。  乙第2号証の1と同2とは、引用商標1の商標権者と同一の商標権者の所有する商標登録第723431号の商標登録原簿と商標詳細情報である。互いに、旧連合商標関係にあったものである。  この乙第2号証の商標は「SCHISSER」の欧文字から成り、「S」の部分には引用商標1と同様に、星の図形、弓の図形が加味されたモノグラムとなっており、これを英語読みすれば、「スチーサー、スチーセル」の自然称呼が生じるものである。  このように、引用商標1とこれと類似する乙第2号証商標の特徴は、双方とも語頭の「シ」又は「S」の最先端部が共に、星の図形と弓の図形が加味されたモノグラムとなっている。  したがって、引用商標1から招来される観念は、モノグラム部分から生ずる「星」や「弓」のイメージであると考えられ、決して「『シーサー』の文字から、沖縄に見られる伝統的獅子像である『シーサー』の観念が想起される。」ことは絶対に有り得ないものである。  本件商標と引用商標1とは、その観念において全く異なるものである。  上述の様に、本件商標と引用商標1とは、外観及び観念において非類似の商標である。 (4)本件商標と引用商標1との比較について (ア)本件商標と引用商標1とは、「観念」においては全く非類似であることは明白である。 (イ)本件商標と引用商標1との称呼の類否  引用商標1は、前述のとおり「シーサー」の片仮名文字において「シ」の部分が星の図形、弓の図形を加味したモノグラム化されているものであり、「シーサー」の称呼のみが生ずる。  一方、本件商標は、三段に横書きしてなる「SHI−SA」、「OKInAWAnORIgInAL」並びに「gUARDIAn ShIShI−DOg」の各欧文字と、獅子犬の図形とを結合してなるものであるから、これより「シサオキナワンオリジナルガーディアンシシドック」の称呼を生ずるものである。  本件商標においては「SHI−SA」の文字が中央にやや大きめに記されていることから、該部分のみの称呼が生ずるとする見方も考えられる。  しかし、獅子犬の図形と、その意味するところの「OKInAWAnORIgInAL」及び「gUARDIAn ShIShI−DOg」の各欧文字とが、「SHI−SA」の文字と一体的にまとまりよく表現されているものであるから、本件商標の示すところは、全体として一体不可分の識別表示であって、本件商標からは「シサオキナワンオリジナルガーディアンシシドック」との全体としての一つの称呼が生ずると考えるものである。  また、たとえ本件商標の「SHI−SA」の文字に着目して「シサ」の称呼が出ると見た場合であっても、全体の文字及び図形との関係を含めて、後述するように、本件商標と引用商標1との外観及び観念が全く異なることを加味して総合的に勘案すれば、本件商標を看た需要者・取引者が、実際の取引において引用商標と誤認混同を生ずるおそれはまったくなく、両者は相粉れるおそれのない非類似の商標ということができる。  商標の類否は、商標の有する外観、称呼又は観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察すべきものとされている(「商標審査基準」九、1)。  また、商標の類否は「対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべき」ものとされており、商標の称呼、外観及び観念という三要素はそのための一応の基準にすぎない。すなわち、「商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかも、商品の取引実情を明らかにし得る限り、具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当」とされており、前記三要素の一のみ類似するとしても、他の二要素において著しく相違する場合には、これを類似とみるべきではないこととなる(昭和43年2月27日 最高裁判所昭和39年(行ツ)第110号 民集22巻2号400頁)。  さらに、東京高裁判決平成12年(行ケ)第147号判決では、商標の類否につき、「・・・商標全体の主たる印象によって商品の出所を識別する場合が少なくない。これは、我々の日常の経験に照らして明らかである。」とされている。すなわち、需要者が商品を購入する際には、「商標全体の主たる印象」を手がかりとして商品の出所を判断することからすれば、図形商標に限らず「商標全体の主たる印象」が異なれば商品の出所の混同が生じ得ないことは明らかであり、東京高裁判決平成平成15年(行ケ)第415号判決及びその前審においても、同様の判断により、「取引者・需要者に強い印象を与える」部分の共通性をもって商標の類否が判断されている。 (5)関連事例  前述したとおり、本件商標と引用商標1とでは、互いに相紛れる恐れのないものであることは明らかであるところ、称呼が共通する商標同士の対比でさえも、称呼、外観及び観念を総合的に勘案した結果、出所の混同が生じないと認められる場合には、互いに非類似と認定されるべきことは、前述最高裁判所判決の示唆するところである。  以下は、このような趣旨に基づき、実際に出所の混同が生ずるおそれが否定された事例であるが、これらは、敢えて外観及び観念のみに着目した場合ですら、本件商標と引用商標1とでは出所の混同が生じ得ないことを明らかにするものである。  したがって、そもそも互いに相紛れる要素のない本件商標と引用商標1との関係においては、なおさら出所の混同を生ずる余地すらないことのより強い証左となるものである。  乙第3号証事例(不服2001−16450)  乙第4号証事例(平成13年(行ケ)第144号)  乙第5号証事例(平成13年(行ケ)第363号)  乙第6号証事例(不服2007−28512号)  乙第7号証事例(不服2006−28892号)  乙第8号証事例(不服2006−28379号)  これらの審決、判決事例における多数の判断が、本件取消理由通知書における本件商標と引用商標1との関係において、事案として特段に異なる取り扱いとすべき明確な事由があるとすれば如何なる点であるかを探るも、そのような明確な差異は到底見いだせない。  そして、審理における類否判断の予測可能性並びに衡平な規定の適用にかんがみて、本件商標も、また、引用商標1とは相紛れるおそれのない非類似の商標と判断されて然るべきものと考える。    2 商標法第4条第1項第15号について (1)広義の混同を生ずるおそれについて  本件商標は、絶対に商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。  第一に、本件商標の商標権者と引用商標2の所有者であるプーマ アーゲールドルフ ダスラー スポーツ社(以下「プーマ社」という。)との間に、いわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化業務を営むグループに属する関係にある営業主であると誤信されるおそれは全く有り得ない。  本件商標は、前述の平成20年(行ケ)第10311号事件(以下「原裁判」という。)における甲第26号証の1ないし甲第28号証に示されているように、本件商標権者の沖縄民芸品店にて店舗販売員がTシャツとして宣伝販売を行っているものであって沖縄土産品として販売しているものである。即ち、小規模の店舗販売である。  これに対し、世界的超大企業であるプーマ社が展開する商品は販売ルート、販売店舗等全ての面で本件商標権者のものと異なっており、誤信されることは全くない。  本件商標を付した商品(Tシャツ等)は本件商標権者が経営する沖縄土産品としての沖縄民芸品店舗である。  両者の間に親子会社、系列会社等緊密な営業関係は全く存在しない。存在しようがない。  一体、何処に本件商標権者の商品とプーマ社の商品が緊密な関係にあると判断されるのか。その証拠は何処に求めているのか。全く理解できないものである。  近年、企業が多角化に乗り出すのは普通のことであり、何もプーマ社に限ったことではない。  企業が多角化したことを理由に広義の混同を生ずる云々は全く言語道断であると云わねばならない。 (2)本件商標と引用商標2との類似性の程度及び取引の実情について (ア)取消理由通知書において「原判決の第13頁23行から14頁8行」の「(ア)本件商標と引用商標2は、アルファベットの文字(『SHI−SA』と『PUMA』)が・・・・・・・曲線の描き方について似通った印象を与える」を引用して、「本件商標と引用商標2とは、一定の類似性を有しているものということができる。」と主張している。  しかしながら、この判決部分は、あくまでも「曲線の描き方」という描写方法が似通っていることを述べているのであって、商標の具体的構成の類似性を述べているのではない。  この引用した原判決文の後に「(イ)差異点」として「本件商標において大きく表示された文字は「SHI−SA」であり、引用商標1(本件における引用商標2)において大きく表示された文字は「PUMA」であって、・・・・そして、両商標における動物図形については、・・・・その先端だけが若干丸味を帯びた形状となっている。」と記載されているのであって、取消理由通知書は、この具体的構成の相違の原判決文を除外している。 (イ)取消理由通知書において、「本件商標と引用商標2とは『SHI−SA』ないし『PUMA』の文字と動物図形との組み合わせによる全体的な形状が共通している」という原判決部分を引用しているが、原判決は、この部分に続いて「共通しているものの、その違いは明瞭に看て取れるものである」として本件商標と引用商標2との相違を明確にしている。取消理由通知書は、原判決の相違部分を除外している。 (ウ)取消理由通知書において、原判決の「本件商標における動物図形は、たしかにその向きや・・・・上記『PUMA』ブランドの商標と似ている点がある」の部分を引用して、本件商標と引用商標2とは一定の類似性を有している、と主張する。  しかしながら、この引用部分の続きは「似ている点があるものの、取引者・需要者に印象付けられる特徴は『PUMA』ブランドの商標とは異なるものである。」と両商標の相違点を述べている。  取消理由通知書は、原判決における両商標の相違部分について述べた判決文を除外している。  さらに、この原判決の次に「すなわち、本件商標に描かれた動物は『PUMA』ブランドのピューマ・・・・・・このように本件商標の動物図形は、『PUMA』ブランドのピューマとは異なる印象を与えるものである。」と、本件商標と引用商標2との相違を明確に判断している。 (エ)取消理由通知書において、「『PUMA』ブランドのピューマを記憶している取引者・需要者は、本件商標に接したときに『PUMA』ブランドのピューマを連想することがある(原判決22頁23行から25行)」と述べ、「してみれば、本件商標と引用商標2とは、一定の類似性を有しているものということができる。」と断定している。  しかしながら、この引用された判決文の続きは、「・・・・ピューマを連想することがあるとしても、本件商標を『PUMA』ブランドの商標とまで誤って誤解するおそれはないというべきである。」となっている。  即ち、取消理由通知書は、原判決文の後半を全く除外している。  しかも、原判決は、「したがって本件商標から『PUMA』ブランドの観念や『プーマ』の称呼が生じるということはできない。」と断定している。  取消理由通知書の主張は、全て原判決の前半の判決文のみを切り取り、後半の結論を切り捨てておいて「本件商標と引用商標2とは、一定の類似性を有しているものということができる。」と主張している。 (オ)本件商標権者が、原裁判において提出した証拠説明書は、本件商標権者が関係する観光土産品等の販売等を行う有限会社沖縄総合貿易(以下「沖縄総合貿易」という。)が観光土産品たる「Tシャツ・エコバック・雑貨等」を販売する際に使用されているものを例示したものである。  したがって、本件商標の態様を表示したTシャツ等もあるし、或いは「OKInAWAn ORIgInAL」、「gUARDIAn ShIShI−DOg」の文字を併記しないものもある。  Tシャツ等の商品に本件商標の態様を付したものを展示するか、そうでないものを展示するかは、自在である。固定的ではない。多種多様である。  本件商標は、あくまでも、図形部分、「SHI−SA」の文字部分並びに二段横書きの「OKInAWAn ORIgInAL」及び「gUARDIAn ShIShI−DOg」の文字部分の構成要素を結合した結合商標であり、これによって商標の機能である商品識別機能、出所表示機能、品質保証機能及び宣伝広告機能を果そうとするものである。  したがって、本件商標は、あくまでも、これら三つの構成要素から成る一体不可分の結合商標であり、これらの各構成要素の一つでも拾象すべきではない。  本件商標に関する異議申立、取消理由通知書等で問題とすべきは、あくまでも本件商標の構成態様である。  沖縄観光土産品の店舗に展示されているものの他の態様のものを取り挙げて本件商標の要部を「SHI−SA」と動物図形とに決めつけるのは、言語道断であるものと思料する。  さらに、取消理由通知書は、「OKInAWAn ORIgInAL」、「gUARDIAn ShIShI−DOg」を併記しない商品に使用している場合があることから、本件商標は、全体が一体不可分の商標とはいい得ないと、主張している。  本件商標とは別の件外のことを取り挙げて本件商標を云々することはこれ又言語道断の主張である。  因みに、原判決において、プーマ社が本件引用商標2の他に、日本で登録された登録商標について列挙している。  これらの商標の構成をみると、「PUMA」の文字と動物図形が組み合わされたもののほか「SPORTCAT」「FLYING PUMA」「PUMA DISC SYSTEM」「PUMA CELL」などの文字と組み合わされたもの、動物図形のみのものなど多岐にわたるが、上方へ向けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いているピューマが側面から見た姿でシルエット風に描かれているという点で共通している。  この様に、真白又は真黒の動物図形だけの登録商標、「PUMA」の文字と動物図形の組合せの登録商標、その他動物図形とSPORTCATの文字の組合せの登録商標、動物図形と「PUMA」の文字とCELLの文字の横二段書きを組合せた登録商標等多岐に亘っている。  同じように、本件商標権者も本件商標の態様の商標の他に別の態様の商標も所有している。  本件商標は、あくまでも前記したように(動物)図形部分、「SHI−SA」の文字部分並びに「OKInAWAn ORIgInAL」及び「gUARDIAn ShIShI−DOg」の結合商標であって、それ以外の何物でもない。  何故に、結合商標の一つの構成要素を敢えて除外しなければならないのか理解に苦しむものであると云わねばならない。何の意図があってのことか、極めて不可思議である。  そもそも商標とは何なのか。  商標法第2条において、「この法律で商標とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」と定義されている。  本件商標も上述したように三つの構成要素から成る結合商標である。  構成要素の一つたりとも除外すべき理由は何もない。  しかも、随所で「本件商標の要部と引用商標2とを比較すると」主張しているが、本件商標の要部は、上記三つの構成要素から成るもので、これら全てが要部である。 (カ)本件商標権者においては、引用商標2の具体的なピューマの図案の独創性は認めるものである。  しかし、四足動物を側面から描いたこと自体に独創性は認めるものではない。 (キ)本件商標の指定商品「Tシャツ,帽子」については、「Tシャツ,ポロシャツ,エコバック,雑貨」等本件商標権者の関連する沖縄総合貿易の関連工場で生産し、同社の直営店である観光土産品店舗等にて販売されている。  したがって、本件商標に関する生産現物及び販売店舗が、申立人の生産現場及び販売店舗と共通であったり、需要者が共通することはない。  一体、如何なる証拠があって生産現物、販売店舗、需要者が共通する部分があるというのか、証拠を示すべきであると思料する。 (ク)引用商標2が、特にスニーカーについて周知著名であるとしても、スニーカーについては、特定の興味のあるブランドを好む愛好者が極めて多いことは周知の事実であり、引用商標2の付されたスニーカーの愛好者も多い。  また、スニーカーや被服は、数日で消費される商品とは異なり、比較的長期に愛用するものであるがゆえ、比較的選択性の強い商品ということができる。  一方、人気の高いスニーカーとなると一文字違いのスニーカーなどの侵害品が海外などで出回っているのが事実のようである。  それゆえ、引用商標2が付されたスニーカーを購入する愛好者は、真正品に対する意識が高く、購入時には、商品及び商標を注意深く確認するのであるから、真正品についての認識やこだわりが高い需要者ということができる。  そして、自ずから、その場合の注意力も他の需要者等の注意力よりも高いものとなる。  近年、真正品を模倣した製品が流通して問題となっており、真正品の選択には特に慎重であって、決して、注意力なしに購入することは有り得ない。  したがって、本件商標と引用商標2における図形との具体的な構成の相違、すなわち、首飾りの有無、頭部や肩の大きさ、尻尾の形状及び大きさ、前後の足の関節などにおける顕著な差異からすれば、四足動物の図形部分のみを看ても、具体的構成要素において顕著な相違を有するものと言わざるを得ず、したがって、引用商標の付された製品と混同を生ずるおそれは全くないと言わざるを得ず、本件商標の図形構成から引用商標2を連想・想起し、引用商標権者プーマ社の業務を連想するとは到底考えられない。  このように、スニーカーや被服の需要者等、特に引用商標を購入する需要者等はその高い意識ゆえに、真正品の識別に対する高い注意力を十分に有しており、本件商標から四足動物を連想・想起する場合はあっても、引用商標権者のPUMAブランドの製品と取り違えることは先ずあり得ない。  前述のとおり、引用商標2がスニーカー等について周知著名であることを敢えて争うものではない。  しかし、実際の取引においては、その商標の著名性が高いほどに、需要者がこれに接する機会は増えるということも否定できない。  それゆえ、需要者は、引用商標がどのような態様か、どのような商品について使用されているかということを、十分に認識するようになり、他の商品と取り違えたり、出所の混同を生じたりする確率は極めて低くなる。  すなわち、商標の著名性が高い程、需要者等が真正品を選ぶ注意力は相当程度に高くなるということができる。  そして、引用商標2は、現実に使用された態様について広く認識されるものとなっているのであるから、これと異なる態様で使用された場合には、需要者は、まったく異なる商標と認識し把握し、また、引用商標2が使用され、認識されるに至った態様と、具体的態様までが細部に至って相当程度に共通する商標であれば、前述のような侵害品と認識する場合もあり、著名商標の付された商品とは異なるものであることを十分に識別することができ、その購入を選択しないこととなる。  したがって、引用商標2の著名性が高いと言える程、需要者は、同一のもの、真正なものを購入する意識が高くなり、少しの差異も見逃さないものとなる。その結果、図形商標が著名であるが故に、却って実際には出所の混同を生ずる可能性が低くなるということもできる。  PUMA製品を展開する引用商標2は、各種のスポーツ関連製品の取扱店や靴店において、スニーカー等について引用商標を付した製品を販売等するものであり、実際にスポーツ関連の製品として取り扱われるばかりか、スポーツ製品としてのその知名度より、通常の靴店で購入する際にもスポーツ製品を製造・販売する申立人の製品として認識し、把握されるものということができる。 (ケ)プーマ社は、世界的超大企業で、グローバル展開をしている企業である。  この様なグローバル大企業と商標権者の関係する沖縄県の一零細企業とが、親子会社や系列会社関係にあるということを、現実に本件商標に接する取引者又は需要者が誤信する筈がない。  先にも述べたように、本件商標は本件商標権者の関係する沖縄の観光土産品としてTシャツ・エコバック等を展開している。  このような一零細企業とスニーカ等で著名なグローバル大企業のプーマ社と、どうして親子関係・系列関係にあると想起するだろうか。誤信した現実の証拠があるのだろうか。  何故に法をそこまで拡大解釈して本件商標を取消さなければならないのか、理解に苦しむものである。本件商標が取り消されるとするならば、商標法の根幹に係る重大な問題にならざるを得ず断じてあってはならないことである。  したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものではない。    3 商標法第4条第1項第19号について (1)本件商標と引用商標2との類否について  原判決は、「本件商標と引用商標2とは非類似で商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれはない。」旨を結論づけている。  取消理由通知書は、この点について、本件商標が前記したように三つの構成要素から構成されているにも拘わらず、「OKInAWAn ORIgInAL」及び「gUARDIAn ShIShI−DOg」の構成要素を除外・無視し続けている。  しかも、 ア 「似通った印象を与える(原判決13頁23行から14頁8行)」 イ 「全体的な形状が共通している(原判決14頁25行から15頁1行)」 ウ 「PUMAブランドの商標と似ている点がある(原判決22頁5行から8行)」 エ 「PUMAブランドのピューマを連想することがある(原判決22頁23行から25行)」  を引用しているが、いずれもこれらの引用判決文に続く判決文を見ると全く異なった展開となっている。このことは前述したので省略する。  申立人にとって、都合の良い判決文個所のみを引用している。 (2)不正の目的について  先ず第一に取消理由の3(5)(ア)については、否定する必要はない。  第二に同(イ)については、商品に併記するもしないも問題は何もない。  本件商標の問題について論じなければならないところを件外の商標について論じようとしている。  申立人は、本件商標の取消しを求め、本件商標の取消理由通知書を発しているのであって、件外の商標を問題とすること自体が的外れである。  第三に同(ウ)について述べると、本件商標決定の過程においては種々の選択があり、別に問題ではない。今、問題となっているのは本件商標である。  第四に同(エ)については、全く論外である。  如何なる因果関係があるのだろうか。甚だ疑問である。  第五に、「不正の目的」云々についても論外であり、如何なる因果関係、如何なる証拠をもって「不正の目的」と断ずるのか理解に苦しむ。  したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものではない。    4 上記のとおりであり、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号の規定に違反して登録されたものではないから登録は維持されるべきである。  なお、本件商標権者においては、本件事件において、書面審理の他に、口頭審理を望む用意がある。    第5 当審の判断  本件商標についてした取消理由の通知(上記第3)は妥当なものであって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号又は同項第19号に違反してされたものといわざるを得ないものである。  そして、取消理由に対する商標権者の意見は、次のとおり採用することができない。 1 商標法第4条第1項第11号について (1)観念上の類否について (ア)本件商標から生じる観念について  本件商標は、別掲(1)のとおりの構成からなるところ、本件商標の動物図形からは直ちに特定の動物を想起しうるものではなく、「SHI−SA」という文字は「シーサ」「シ・サ」「シサ」と様々に読めるものであって直ちに特定の観念を想起させるものではないが、「OKInAWAn ORIgInAL」、「gUARDIAn ShIShI−DOg」という文字から「沖縄のオリジナル」「保護者、守護者」「獅子犬」などの意味を読みとることができ、「SHI−SA」の文字及び動物図形と相まって、沖縄に見られる伝統的な獅子像である「シーサー」の観念が想起される(原判決15頁4行から11行)。  また、商標権者は、本件商標から沖縄に見られる伝統的な獅子像である「シーサ」の観念が想起されることを認めている。 (イ)引用商標1から生じる観念について  商標権者は、「引用商標1は、『シーサー』の片仮名文字において、『シ』の部分が『星の図形』と『弓の図形』を加味したモノグラム化されているものである。即ち、ドイツ語の『射る』の観念と『弓』のモノグラムを有する構成からすれば、引用商標1には、『射る』『弓』言った観念が内包されていると看ることができる。・・・『SCHISSER』の欧文字から成り、『S』の部分には引用商標1と同様に、星の図形、弓の図形が加味されたモノグラムとなっている商標登録第723431号(乙第2号証の1と同2)と引用商標1とは、互いに、旧連合商標関係にあったものである。したがって、引用商標1から招来される観念は、モノグラム部分から生ずる『星』や『弓』のイメージであると考えられ、決して『シーサー』の文字から、沖縄に見られる伝統的獅子像である『シーサー』の観念が想起されることは有り得ないものである。」旨主張している。  しかしながら、引用商標1は、「SCHISSER」の欧文字を表したものではなく、別掲(2)のとおり、「シーサー」の片仮名文字の一部をややデザイン化したものと容易に認識されるものである。  そして、商標中の文字の一部をデザイン化することは、一般に広く行われているものであり、また、我が国におけるドイツ語の普及の程度からすれば、「シーサー」の片仮名文字からドイツ語の「SCHISSER」を想起することは考え難いものである。  そうとすれば、引用商標は、その構成文字「シーサー」から、沖縄に見られる伝統的な獅子像である「シーサー」の観念を生じるものと判断するのが相当であるから、商標権者の上記主張は採用できない。 (ウ)したがって、本件商標と引用商標1から生じる観念は、いずれも、沖縄に見られる伝統的な獅子像である「シーサー」(商標権者は「シーサ」と述べているが、実質的には同一である。)であり、同一である。 (2)称呼上の類否について (ア)本件商標から生じる称呼について  商標権者は、「本件商標から『シサオキナワンオリジナルガーディアンシシドック』の称呼を生ずるものである。」と主張しているが、本件商標からは、「SHI−SA」の文字あるいは上記のような沖縄の獅子像の観念から「シーサ」あるいは「シーサー」の称呼が生じるものと判断するのが相当であるから、商標権者の上記主張は採用できない。なお、この点について、原判決も18頁1行から2行において判示している。 (イ)引用商標1から生じる称呼について  商標権者は、引用商標1から「シーサー」の称呼が生じることを認めている。 (ウ)したがって、本件商標と引用商標1から生じる称呼「シーサー」は、同一である。 (エ)なお、本件商標から生じる称呼「シーサ」と引用商標1から生じる称呼「シーサー」の比較においても、両称呼は、明瞭に聴取されにくい末尾における長音の有無に差異を有するにすぎないものであり、この差異は微差というべきである。 (オ)してみれば、本件商標と引用商標1とは、「シーサー」の称呼を共通にし、「シーサ」と「シーサー」の称呼において類似するものである。 (3)そうとすれば、本件商標と引用商標1とは、外観において相違するとしても、観念及び称呼を共通にする全体として類似の商標である。  また、本件商標の指定商品「Tシャツ,帽子」は、引用商標1の指定商品「下着,寝巻き類,その他の被服(運動用特殊衣服を除く)」に包含されている。  したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。  なお、商標権者は審判決例(乙第3号証ないし乙第8号証)を提出しているが、これらの審判決例は、称呼を共通にするものの、同一の観念を生ずるものではないから、称呼及び観念を共通にする本件とは、事案を異にするため採用することができない。     2 商標法第4条第1項第15号について (1)広義の混同を生ずるおそれについて  商標法第4条第1項第15号の「広義の混同を生ずるおそれ」については、広義の混同を生ずる「おそれ」があれば適用されるものと解される。  商標権者は、「本件商標の商標権者と引用商標2の所有者であるプーマ社との間に、いわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化業務を営むグループに属する関係にある営業主であると誤信されるおそれは全く有り得ない。」旨述べているが、本件について申立人が平成19年10月22日付けで提出した手続補正書及び平成21年3月6日付けで提出した上申書(取消理由通知と同日付けで発送済み)によれば、「サイズ&カラー豊富なPUMA?いえ、シーサーのパロディチビTです。(甲第35号証)」、「まずは『SHISA』。こちらは沖縄のシーザーをPUMA風味に仕立てたものです。(甲第36号証)」、「みなさん このジャンピングシーサーって単なるプーマのパクリ。またはプーマーのパロディーバージョンだと思っていませんか????(甲第38号証)」のように記載されていることから、本件商標の商標権者と引用商標2の所有者であるプーマ社との間に、いわゆる「広義の混同を生ずるおそれ」があるものと解される。 (2)本件商標と引用商標2との類似性の程度及び取引の実情について  商標権者は、「取消理由通知書は、原判決における『似ている点があるものの、取引者・需要者に印象付けられる特徴はPUMAブランドの商標とは異なるものである。』との両商標の相違部分について述べた判決文を除外している。」及び「取消理由通知書は、原判決文の後半『・・・・ピューマを連想することがあるとしても、本件商標をPUMAブランドの商標とまで誤って誤解するおそれはないというべきである。』を全く除外している。」旨述べているが、原判決は、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとした審決に関して判断しているのに対し、第2回取消理由で通知した同項第15号は、同項第11号と異なり、いわゆる広義の混同を生ずるおそれがある商標であるか否かについて、判断すべきものと解される。  したがって、第2回取消理由は、同通知書に明示した「レールデュタン判決(平成12年7月11日 最高裁判所第三小法廷 平成10(行ヒ)85)」に基づいて、本件商標と引用商標2との類似性の程度及び取引の実情について判断したものである。 (3)他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標について  商標権者は、「本件商標は、あくまでも、図形部分、『SHI−SA』の文字部分並びに二段横書きの『OKInAWAn ORIgInAL』及び『gUARDIAn ShIShI−DOg』の構成要素から成る一体不可分の結合商標であり、これら三つの構成要素の一つでも拾象すべきではない。」旨述べているが、商標法第4条第1項第10号から同項第14号までに該当する商標は、混同のおそれがある商標について「商標(標章)の同一又は類似」及び「指定商品(指定役務)の同一又は類似」の概念を用い定型的、技術的に適用して法的安定化を図るのに対して、同法第4条第1項第15号は、同項第10号から同項第14号以外で、商標ごとにその取引の実情に応じて個々に適用して具体的妥当性をねらったものといえる。  したがって、同項第15号に該当する商標か否かの判断については、登録商標(本件商標)自体からするのではなくて、登録商標と他人の使用する商標等との関係において、具体的な取引の実情を取り込んで判断したものである。 (4)引用商標2の周知著名性について  商標権者は、引用商標2がスニーカー等について周知著名であることを争っていない。 (5)本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力について  商標権者は、「近年、真正品を模倣した製品が流通して問題となっており、真正品の選択には特に慎重であって、決して、注意力なしに購入することは有り得ない。」旨述べているが、広義の混同のおそれとは、真正品か否かではなく、ある者(プーマ社)と何等かの関係にある者の業務に係る商品であると誤信するおそれをいうのであるから、商標権者の上記主張は採用できない。 (6)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。    3 商標法第4条第1項第19号について (1)仮に、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するものでないとしても、本件のすみやかな解決に資するため、同項第19号の取消理由について判断する。 (2)商標法第4条第1項第19号の趣旨  商標法第4条第1項第19号の趣旨は、主として、外国で周知な商標について外国での所有者に無断で不正の目的をもってなされる出願・登録を排除すること、さらには、全国的に著名な商標について出所の混同のおそれがなくても出所表示機能の希釈化から保護することを目的とするものである。  そして、商標法第4条第1項第19号は、「(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されていることから、当該商標が同項第1号から同項第18号に該当しない場合に(特に、出所の混同のおそれがなくても)適用されるものと解される。 (3)本件商標と引用商標2との類否について  商標権者は、「申立人にとって、都合のよい判決文箇所のみを引用している。」と述べているが、商標法第4条第1項第19号における類似性の判断基準は、同項第11号におけるそれと基本的には同様であるが、上述したとおりの同項第19号の趣旨にかんがみ、同項第11号においては、混同が発生するか否かが重視されるべきであるのに対し、同項第19号にあっては、他人の業務に係る商品等を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標とそれを有する著名な事業主との一対一の対応関係を崩し、希釈化を引き起こすような程度に類似しているか否か、すなわち、容易に他人の業務に係る商品等を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標を連想(想起)させるほど類似しているか否かを検討すべきものと解するのが相当である。  そして、本件商標は、第2回取消理由通知書で述べたとおり、容易に他人の業務に係る商品等を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている引用商標2を連想(想起)させるほど類似しているということができる。 (4)不正の目的について (ア)引用商標2の周知著名性について  商標権者は、上述したとおり、引用商標2がスニーカー等について周知著名であることを争っていないものである。  そうとすれば、商標権者は、引用商標2についての周知著名性を十分認識していながら、あえてこれと類似している本件商標の登録出願をしたものと判断するのが相当である。 (イ)本件について申立人が平成19年10月22日付けで提出した手続補正書及び平成21年3月6日付けで提出した上申書によれば、「サイズ&カラー豊富なPUMA?いえ、シーサーのパロディチビTです。(甲第35号証)」、「まずは『SHISA』。こちらは沖縄のシーザーをPUMA風味に仕立てたものです。(甲第36号証)」、「みなさん このジャンピングシーサーって単なるプーマのパクリ。またはプーマーのパロディーバージョンだと思っていませんか????(甲第38号証)」のように記載されていることから、本件商標は、引用商標2の著名性を不当に利用していると考えられる。 (ウ)「OKInAWAn ORIgInAL」、「gUARDIAn ShIShI−DOg」の文字を併記しないで商品に使用している場合があることについて  商標権者は、「本件商標の問題について論じなければならないところを件外の商標について論じようとしている。」と述べているが、商標権者は、本件商標中の「OKInAWAn ORIgInAL」、「gUARDIAn ShIShI−DOg」の文字を併記しないで商品に使用することにより、不自然に引用商標2にすり寄って使用していることが伺えるものである。 (エ)これらの事情を総合すると、商標権者は、本件商標の登録出願時及び登録審決時において、著名商標である引用商標2が有する信用又は名声に便乗して利益を得ようとの不正の目的をもって、本件商標の使用をするものと判断するのが相当である。 (5)小括  したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の規定に違反して登録されたものである。    4 口頭審理について  商標権者は、「なお、本件商標権者においては、本件事件において、書面審理の他に、口頭審理を望む用意がある。」と述べているが、商標法第43条の6によれば、「登録異議の申立てについての審理は、書面審理による。」と規定されていように、登録異議の申立てについての審理は、原則として書面審理によること及び商標権者は口頭審理において陳述等をする内容について何ら言及がないことから、口頭審理を行わないこととした。    5 まとめ  以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号の規定に違反して登録されたものであり、また、仮に、本件商標が同項第15号に該当しないとしても、本件商標は同項第19号の規定に違反して登録されたものと認められるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。  よって、結論のとおり決定する。         平成21年10月29日      審判長  特許庁審判官 森吉 正美           特許庁審判官 渡邉 健司           特許庁審判官 小畑 恵一     別掲 (1)本件商標            (2)登録第711054号商標(引用商標1)            (3)登録第3324304号商標(引用商標2)            (行政事件訴訟法第46条に基づく教示)                この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。                    (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意)        特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 -------------------------------------------------------------------------------- 〔決定分類〕T1651.262−Z  (Y25)             263             271             222 -------------------------------------------------------------------------------- 上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。 認証日 平成21年10月29日  審判書記官  石田 順三